■ 労働者雇い入れ時の注意点

●労働条件の明示

使用者が労働者をその指揮命令のもとに就業させる根拠は、双方の合意を基礎とする契約によるものです。
しかし、契約といっても労働契約は労働者としては労働関係に入る以上、事実上それに従わざるを得ないのが実情です。
そこで労働条件上のトラブルを避けるために、労働条件の書面交付による明示が平成11年4月1日より労働基準法の改正で使用者に義務付けられました(労働基準法第15条)。

●明示すべき事項

具体的内容は、労働基準法施行規則第5条に次のように列挙されています。
ただし、(カ)から(ス)までに掲げる事項については、使用者がこれらに関する定めをしない場合においては、この限りでありません。
(ア) 労働契約の期間に関する事項
期間の定めのある労働契約の場合はその期間、期間の定めがない労働契約の場合はその旨
(イ) 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
(ウ) 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
基本賃金の額、手当ての額又は支給条件、時間外、休日又は深夜労働に対して支払われる割増賃金について割増率を定めている場合にはその率ならびに賃金の締切日及び支払日等
(エ) 賃金(退職手当及び(キ)に規定する賃金を除く。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
(オ) 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
退職の事由及び手続き、解雇の事由及び手続き等を明示
(カ) 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
(キ) 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与並びに最低賃金額に関する事項
(ク) 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
(ケ) 安全及び衛生に関する事項
(コ) 職業訓練に関する事項
(サ) 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
(シ) 表彰及び制裁に関する事項
(ス) 休職に関する事項

●明示の方法

上に掲げた項目の中で、(ア)から(オ)の各事項(ただし、(エ)の賃金に関する事項のうち「昇給に関する事項」を除く。)については、書面を交付することによりこれを明示しなければなりません。
また、(ウ)から(シ)まで((ウ)のうち、所定労働時間を超える労働の有無を除く)の10項目は、いずれも就業規則の必要記載事項(労働基準法第89条)と一致しているので、これらの各項目は就業規則を交付することによって代替することも可能です(平成11年1月基発45号)。    また、就業規則等の規定と併せ、労働契約締結後初めて支払われる賃金等が当該労働者について確定し得るものであればよく、例えば、労働者の採用時に交付される辞令であって、就業規則等に規定されている賃金等級が示されているものでも差し支えありません(昭和51年6月 基発690号)。
この明示の円滑な施行を図る観点から、「労働条件通知書」のモデル様式様式が作成されています。

●試用期間

労働者を正式に採用する前に、3~6ヶ月程度ためしに試用することがあります。その間に社員としての適格性を判断します。不適格と判断された場合は本採用を拒否するものです。
しかし、いつでも拒否できるわけではなく、拒否といえども労働契約の解除は解雇と同じですから、本採用の拒否には正当性を求められます。しかし、裁判所は試用期間中の解雇は、本採用後の解雇より広い裁量権を認めています。
試用期間中に判断される事項は次のようなものがあります。
このような事項に問題があれば、本採用の拒否が正当と認められます。

勤務成績
勤務態度
健康状態
出勤率
協調性
提出書類の不備

●試用期間の長さ

いつまでも試用期間といって引っ張るのは民法第90条の公序良俗違反となります。一般に試用期間は3ヶ月であり長くとも6ヶ月まででしょう。しかし、判例では1年の試用期間も無効とはしていません。

なお、試用期間中の解雇でも、14日を超えて使用した場合は、通常の解雇と同じく、30日前の解雇予告か30日分の解雇予告手当てを支払わねばなりません。(労働基準法20条、21条)

●身元保証人

会社に就職する際に付けることを要求される身元保証人。通常の保証人とはどこが違うのでしょうか?

身元保証人とは、雇主との間で、将来被用者が雇主に与えるかもしれない損害を担保することを契約し、実際に被用者が雇主に損害を与えた場合には、その損害を担保する責任を負う者のことです。

身元保証人は、通常の保証人と比べ、担保する範囲が広く、また将来の損害について担保するため、その責任を契約のみに委ねると身元保証人の責任が非常に重くなるおそれがあります。そのため、「身元保証に関する法律」によって、その責任の範囲が限定されています。

すなわち、身元保証契約の存続期間を原則3年、長くても5年とするとともに(同法2条:更新は可能ですが、その場合も最長5年)、雇主が被用者について、被用者に業務上不適任または不誠実な行跡があり、保証責任が発生する恐れがあることを知ったときまたは、任務または任地を変更したことによって保証責任が加重または監督が困難になるときには身元保証人にこれを通知する義務があり(同法3条)、身元保証人は通知を受け、または自身でこうした事実を知ったときには将来に向けて身元保証契約を解除できるとしています(同法4条)。また、これらの規定に反し、身元保証人に対して厳しい内容の特約を設けても、効力を有しないとしています(同法6条)。

このように、身元保証人の責任はある程度限定されていますが、それでも厳しい内容であることには変わりありません。軽い気持ちで引き受けることは避けるべきでしょう。

なお、学生や賃借人などが与えた損害を担保する保証人も身元保証人とよばれることがありますが、こちらには「身元保証に関する法律」が適用されません。


出雲大社の桜

岡村正人
所長 岡村 正人  
昭和54年中央大学法学部
一部法律学科卒
東京都社会保険労務士会所属
東京都行政書士会所属
国際行政書士協会会員
八王子商工会議所会員

岡村AMEBAブログ
中日新聞掲載
中日新聞掲載